個人陶芸家の作品にふれる楽しみ〜クラフテリアにて〜

やってみた

キミにきめた!

朝のコーヒー用にクラフテリアで陶器のマグカップを買いました。

大手町のクラフテリアでは、陶芸などの個人作家さんの器をたくさん見れて、買えます。さらに、飲めます!「飲める」というのは、「ポッピングスタンド」という併設のバーがあり、作家さんの器で地酒などを楽しめるのです。

個人作家さんの作品というと、普段ふれる機会もあまりなく「値段が高いのでは」とか「クオリティはどうなんだろう」など疑問に思う方も多いのではないかと思います。

今回は、マグカップの購入を通して思った自分なりの「個人作家さんの作品の楽しみ方」についてお伝えをできたらと思います。

こんなマグカップを買った!

クラフテリアに足を運ぶと、様ざまな作家さんの作品がそれぞれいくつも置いてあります。

沢山ある器の中で目にとまったのは、關さんという作家さんの「そろばんマグ」という作品でした。

陶芸家・關(せき)さん

名前のとおり、そろばんの珠のようなユニークな形をしています。その形状のおかげで、飲み口は薄めで上品なのに量がたくさん入るところが気に入りました。

あとは何といっても釉薬の色。淡いさりげない色合いと質感にひと目で心を奪われました。

また、裏返して高台を見てみると、切り口がスパッとキレイです。テーブルに置いても決してグラつくことはありません。

すごく丁寧な仕上がりです。

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「◯◯焼き」ではなく

關さんのHPを見ると、こんなことが書いてありました。

よく「これは何焼きですか?」と聞かれるのですが、作陶している場所は産地でもなく、さまざまな産地から取り寄せた粘土をブレンドして使っていたり釉薬もオリジナル調合のものを使っているため、厳密に「◯◯焼きです」とは言えないようなものを作っています。

既存のかたちにとらわれることなく、自分の作風を追求していることが伝わってきます。

一方で、買う人が「何焼きか」が気になるのは、もしかすると、自分も含め現代人が「ブランドで判断してモノを買うこと」に慣れすぎてしまっているからなのかも、と感じました。

ブランディングの教科書には「ブランドは信用の蓄積によりつくられ、記号により他の商品との区別を明確にし、消費者の判断を助ける」ということが書いてあります。「有田焼き」や「九谷焼き」、地名の冠せられる焼き物は、たしかにその歴史から信用も厚く、安心できる気がします。

しかし、知らない作家さんの作品を買う場合は、ブランドの名前でモノを買うのとは状況が異なります。

先入観を持たず、置いてある器を直に見て手にとってみて、使ってみて、純粋に自分の気に入るかどうかがまず何よりも重要となるのではないでしょうか。また、作品に取り組む姿勢や制作過程など、作家さん自身のことがわかる情報があると、一層気持ちは高まります。

ブランドの力がまだあまりなかったり、特に芸術的な要素を含むモノの購入に踏み切るときには、手に取ったものを自分が気に入るかどうかの「目利き」が購入者に求められるような気がします。そこには、品物自体を見極める目のほか、自分の好みや感性を客観的にみる目の両方が含まれます。

自分なりの「目」を持つことは、なかなか大変なことなのかもしれませんが、ひとたび自分の気に入ったものが見つかれば、値段が少々高かろうが、大した問題ではなくなります。(もちろん、その人の支出能力の範囲内ではありますが)

購入をするかしないかのボーダーライン上に立ち、自分の好みに関する記憶をたどりながら感性をフル回転させる。その状態で、目の前の作品と真剣に向き合い、観察をし、自分だけの器を見つける。もはやマーケットからは切り離され、自分と器の対峙だけがある世界。そんな体験ができるのも、個人作家さんの作品を買う醍醐味なのかもしれません。

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豊かさのために

モノを機能性と価格の釣り合いばかりで測っていると、だんだんとモノに対する審美眼が曇っていく気がします。「モノはその機能さえ果たせばなんでも良い」という考えに全てが侵食されると、モノの持つ美の多様性(= 豊かさ)が世の中から失われていってしまうのではないかということが危惧されます。(このあいだみた本にジョン・ラスキンという人の説が紹介されており、そんなことが書いてあった気がします)

「個人作家さんの作品を買うことは、美の多様性に貢献することである」

そのように考えると、より崇高なる目的を持って、作品購入の第一歩を踏み出しやすくなるのではないかなあと思います。(自分が買うときは、そんなことまで思ってはいませんでしたが)

今回のマグカップは秋~冬のイメージの作品だそうです。季節とともに、また違う作品ができあがってくることを思うと、今から楽しみです。

毎日使いの器に、個人作家さんの作品。

おすすめします。

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